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2006年08月11日

第1章 出航 危機脱出(1)

静寂を引き裂く大音響に、みんなの顔に緊張感がみなぎった。
 危機を知らせる赤色灯が、せわしなく点滅しはじめた。
 各自の、腕時計型携帯モバイルpcが、合成音声を発して、危機を伝えていた。
 「全員スクランブル体勢を引け。」
「子供たちは、全員船室に戻って静かにしているように。指示があるまで勝手な行動はつつしめ。」
「絶対甲板には出るなよ。」

「メインスイッチオン。」
「ハリアップ。」
「気配を消すのだ。」
「減速開始。一二ノットまで減速。」
「取り舵いっぱい。」
「右旋回六〇度。」
操舵室で海江田千里船長が大声を張りあげ矢継ぎ早に、しかし落ち着いて的確に指示を出していた。
 艦内は、すでに臨戦態勢に入り、全員が緊張感をにじませて、せわしなく計器類を操作したり、動き回っていた。
子供たちは、船室にひとかたまりになって、事の成り行きがどうなるのかと、固唾をのんで見守っていた。
 丸いトンボメガネをかけた『トンボ』君は、心配でたまらないという風で、落ち着きが無く、メガネの奥の目は視点が定まらず空をさまよっていた。
 『トンボ』君というのは、小笠原翔太君のことで、小学6年生。お父さんは、小笠原太一さん。お母さんはみどりさん。小学5年に年子の弟健司君、ちょっとのろまなので『ノロ』君と呼ばれている。小学3年に妹の優花ちゃん、『スミレ』ちゃんと呼ばれている。3人兄妹の長男なんだ。

 今どきの家庭で、3人兄妹は珍しい。少子高齢化が益々ひどくなり、女性が結婚して産む子どもの数は1を切って久しく、とうとう0.92まで落ち込んでしまっていた。
 西暦2004年に、100年先まで大丈夫と時の政府が大見得を切った、改正年金法は当の昔に破綻していた。
 2005年に人口の増加が止まり、減少に転じたのを皮切りに、益々少子化に拍車がかかり、団塊の世代と呼ばれた、昭和22年から24年生まれの世代がほとんどこの世から姿を消して、日本国の人口は、1億人を割り込んでいる。
 住民の10人に1人は外国人という異常事態に、政府は外国人にも手軽に国籍を取得させる方針に切り替えたが、遅きに失した感は否めない。
 天皇制は、皇室典範の改正により、女系天皇が認められ、女性の天皇が150代天皇として継承されていた。
 しかし、急激な外国人の流入と混血により、単一民族としての誇りはいつしか希薄になり、女性天皇の皇太子が、外国の皇室からお嫁さんをもらうことに対して、異議を唱えるものは、国会議員と、皇室の一部守旧派を除いてはほとんどいなかった。
 それほどに、人種間では交流が急速に広まっていったが、こと領土となると、地球上からいざこざが絶えることは無かった。

 知ったかぶりの、『チョロキュウ』は、「大丈夫だよ。この船は、最新技術のレーダーにも見つからないように出来ているんだ。先日カツゾーじいさんたちが、話しているのを聞いたんだから間違いない。心配しなくて大丈夫だよ。」と、『チョロキュウ』は念を押して言った。
 『チョロキュウ』は、中学1年生。名前は、佐々木信也。サッカーが得意なんだ。
 「それなら安心だね。」小学校五年生にしてはおませな、『レモン』ちゃんが相づちを打った。
 『レモン』ちゃんっていうのは、『サスケ』君の妹なんだ。小学5年生で海江田瑞希と言うんだ。『ノロ』君と同級生で、家も近所なんだ。彼女がどうして『レモン』ちゃんて呼ばれるようになったかというと、昔ラジオの女性パーソナリティーで落合恵子さんという人がいて、とても人気があったんだって。その人のあだ名が『レモン』ちゃんで、おばさんか誰かが、瑞希ちゃんは落合恵子によく似てると言って、いつの間にか『レモン』ちゃんって呼ばれるようになった。
 「それでもぼくは心配だなあ。」『泣きブタ』君は、おどおどしながら言った。「だって、この船はそんなにも大きくないし、スピードだっていまいちだし、なんたって戦う武器すら持ってないんだから、いざっと言うときは心もとないよ。」
 『泣きブタ』君はとても臆病で、何かあると直ぐ泣き出してしまうので、こう呼ばれるようになった。本人はとてもいやがってるよ。まだ小学2年生だし、お母さんに甘えたい年頃だものしかたない。本名は、渋谷哲平。強そうな名前なんだけど、名は体をあらわさない。
 『学者』君は、我関せずという風で、パソコンのキーボードをせわしなく叩いていて、しきりに何かを計算しているようだった。
 『学者』君というのは、高校2年生で、名前は野口博士という。とにかく頭の回転が良くて物知り。あまり勉強しているようには見えないんだけど、テストの点はいつも一番。特に、コンピュータのことに関してはとても詳しくて、ビルゲイツを凌ぐんじゃないかって、県下でも評判。彼のことをみんなは尊敬も込めて『学者』君と呼んでいる。
『学者』君は、得心したように「西暦1999年8月18日のグランド・クロスで、小惑星の幾つかの軌道に変化が現れている。詳しく計算しないと確かなことは言えないが、小惑星04262イチローが地球に大接近する可能性がある。」と、つぶやいた。
「この小惑星は、日本人大リーガーのイチローが262本の大リーグ年間安打を記録した年に発見されたので、発見者が大リーグ好きだったのでイチローと命名した小惑星なんだ。」

この続き
危機脱出(2)を読む
posted by 冬野☆男 at 22:37| Comment(3) | TrackBack(0) | 第1章 出航 危機脱出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「新人賞をとって作家になる!」というブログを作っております、ハンドルネームかつきと申します。

冬野☆男様が書かれている「空想科学冒険小説『少年忍者サスケが行く』」を拝見し、ぜひ相互リンクをお願いしたく、書き込みをさせていただきました。

こちらは主にエンターテイメント系の新人賞を目指す方々への新人賞情報、原稿用紙の書き方、応募原稿の送り方、作品の書評などの情報提供を行っております。

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ブログURL http://shinjinsho.seesaa.net/

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
突然の書き込みで恐れ入りますが、ご検討いただきますよう、よろしくお願いいたします。
また、ご迷惑でしたらお手数ですが、削除ください。

Posted by かつき at 2006年08月23日 15:19
かつき様。メールありがとうございました。早速リンク張っておきます。こんなものを書き始めると、誰か読んでくれる人がいるのかと、心配になります。一人でも読んでくれる人がいれば、続けなければという義務感も沸いてきますので、1通のメールがとても励みになります。
ご訪問ありがとうございます。
これからかつき様のブログ拝見に伺います。
Posted by 冬野☆悪 at 2006年08月23日 17:34
リンクのご了承ありがとうございます。
またさっそく、リンクを張ってくださり感謝しております。
こちらもリンクいたしましたので、ご確認ください。
http://a.hatena.ne.jp/katsukix/

これからもどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by かつき at 2006年08月23日 20:13
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