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2006年08月15日

第1章 出航 危機脱出(3)


復習する

ドッグの中で静かに出番を待っていた『カメレオン号』は岸壁に繋がれていたもやい綱を解かれ、静かに岸を離れて行った。
計画の決行の日は、計画の初期の段階ですでに、学校の夏休み中の新月の日と決められていた。夏休み中なら、家族で旅行に行ったり、親戚のところへ遊びに行ったりする家庭も多いので、しばらく留守にしていてもあまり不審には思われないだろう。なにより、夏休みが休みの中では一番長いからね。それに、冬は海の天候も大荒れになって危険も大きいからそれで、夏休みを選んだわけさ。
彼らは、出来るだけ気づかれずに岸を離れたかった。そのためには月明かりさえも邪魔だった。新月の日を選んだのはそんな訳があったからだ。
東京ドームの十倍以上の広さがある鶴亀造船所のドッグ内の明かりは全て消えていて、あたり一面漆黒の闇が広がっていた。陳腐な表現しかできないけどこれが一番しっくりするのであえて言わせてもらえば、まるで闇夜のカラスのような暗さで、誰かに鼻をつままれても分からないくらい暗かった。
それで、大人はもとより子どもたちの心臓は恐怖心と興奮から早鐘のように高鳴っていた。
でも恐怖心よりも気持ちの高ぶりのほうが大きかったのは言うまでもない。
三号ドッグから『カメレオン号』は、静かに滑るように太平洋に滑り出した。
普通なら、シャンパンを割って派手な進水式をやるのだろうが、そんなことは抜きで、ことは隠密裏に進められた。
星の輝きはいつにも増してきらめいている様に『サスケ』には感じられた。
東の空に、こと座のベガ、はくちょう座のデネブ、わし座のアルタイルを頂点とする、夏の大三角形がいつもより大きく輝いて見えた。
まるで彼らの航海を祝福するかのように。
南の低い位置には、さそり座のアンタレスが赤く輝いていた。それはまるで、サソリの心臓の鼓動のように瞬いていた。

燃料電池エネルギー船『カメレオン号』はこうして航海に旅立った。
鶴亀造船所のドッグを離れて、五日目の朝、あたりには島影一つなく、360度見渡す限り水平線が続いていた。
水平線はかすかに丸みがかって見え、こんな光景を見れば誰だって、地球が球形であることに気が付くんじゃないかなと『サスケ』は思った。
もっとも、地球が丸いという潜在的な知識がそう思わせたのかもしれない。
昔の人は、地球は巨大な像が支えており、海の果ては巨大な滝のようになっていて、そこに落ちたら助からないと信じられていた時代もあったのだから。
地球が完全な球形だということは、コロンブスによるアメリカ大陸発見や、マゼランの世界一周などの大航海時代があって実証された。
それからわずか500年程しか経っていない。
人工衛星が地球の全景を写真に収めてから、1世紀しか経っていない。

出航の時の張りつめていた空気も和み、みんなの顔にも笑みが戻ってきていた。
子供たちはジュースで、大人たちはシャンパンでささやかな乾杯をした。
彼らの遠大な計画から見れば、まだ本の序章に過ぎないのだが、とりあえず公海上に出られたことで、一つの区切りがついた。
時折、トビウオが水面から飛び立ち、海面すれすれに滑空する姿が見られた。胸びれが大きく発達しているし、腹びれも大きいから、まるで複葉飛行機が飛んでいるような優雅さだ。太陽の光を受けて輝いて見える。魚が空を飛ぶなんて本当に不思議だ。跳躍力のあるやつは、2〜3百メートルは飛んでいるんじゃないかな。それにしても、飛んでいる間呼吸は苦しくないのかなぁ。『サスケ』は、ちょっと不思議な気がした。
「トビウオは幼魚の頃は、ひげが生えているんだよ。大きくなると消えてなくなるんだけどね。そのひげの長さと体長の比率で、種類が分かるんだよ。」と、大学で海洋学部に通っている『サカナ』君が教えてくれた。
「ところで、魚に関する問題だよ。頭から尾ひれに向かって縞模様がある魚の縞は、縦縞か横縞か。さて、どっちでしょう。」
「イサキとかの縞模様だよね。頭から尻尾に向かって水平になっているから横縞じゃないの。でも、問題に出すところを見ると怪しいな。どっちだろう。素直に横縞。」
「ブー。残念。魚の縞模様は頭を上にして見たときの状態で判断する事になっているから、縦縞でした。」
「ところで、トビウオ以外にも、空中を飛ぶ魚がいるんだけどな。誰かわかる人はいるかな。」
「マンタは飛ぶよ。」と『泣きブタ』君。
「マンタは飛ぶというよりも、跳ぶというほうがぴったりだね。」
「イカの仲間でトビイカというのがトビウオのように海面を滑空することが知られているんだ。そのうちお目にかかるかもしれないね。」

その日の晩、子供達は甲板に出ることを許され、久々に潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。
子供達は、満天の星空を見上げながら、宇宙について語り合っていた。
「この宇宙の中で、地球と同じような生物が存在する星はあるのだろうか。」
「ぼくはあると思うよ。宇宙は無数の小宇宙の集まりで、ぼくたちの銀河系といわれる小宇宙は、その中でもごく普通の宇宙なんだ。そして、太陽系もごく普通の星だから、あると考える方が自然だと思うよ。ただし、ぼく達の地球を除いた太陽系の中には99.999・・・・%無いだろうな。電波望遠鏡のおかげで、太陽のように惑星を持っている恒星もどんどん発見されているよ。2005年4月30日には太陽系外惑星の写真が公開されたんだ。大きさは木星よりも大きな惑星で、地球規模の大きさの惑星は、今の技術では探せないらしい。それと、最近の隕石の研究から、地球の生命の誕生は自然に発生したのではなく、宇宙から生命の種が飛んできて、地球はその種が育つ環境にたまたまあったらしい。」
「それじゃ、宇宙人がいるとして、宇宙人はどんな姿をしているのかな。ローソン・ウェルズの火星人とか、ウルトラマンとか、バルタン星人、キングギドラとかに似ているのかなあ。」

危機脱出(4)




posted by 冬野☆男 at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 第1章 出航 危機脱出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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