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2006年08月21日

第1章 出航 忍者通信(1)

『サスケ』は勉強よりも体を動かすほうが好きで、同級生が勉強塾やピアノなどの習い事をしていても、そういったものには全く興味を示さず、もっぱら体育会系のスポーツが専門である。空手と水泳、それも古式泳法の道場へ通っている。しかし、一番力を入れているのは忍術である。
それでも、学校の成績は中の上くらいをキープしているので、両親は何も言わない。むしろ、若いうちに体を鍛えるのは、将来の肥やしになるとの考えを持っているから、『サスケ』がやりたいということは、自由にやらせてくれた。
ただ、自分がやると決めたことは途中で投げ出してはいけないと、強く言い聞かせていた。
『サスケ』が忍術を習うようになったきっかけは、たまたま近所に忍術に詳しいおじさんがいて、なんでも自分は免許皆伝とか言っている変なおじさんなんだけど、悪そうな人じゃないし、正直言って勉強も余り好きじゃないので、忍術を習っているっていうのも格好良いという理由で始めた。本当に単純な動機である。
先生の名前は、石川弐右衛門半って言っていた。何でも、青森県で生まれた忍術の流派で中川流の流れを継いでいるというが定かではない。本当にそんな流派があるか、『サスケ』には判らない。
石川先生は、脳を鍛える忍者食というのを常時携帯していた。なんでも『松の実』、『くこ』、『ひえ』、『ゴマ』、『昆布』『小魚の干物』『田七人参』『はとむぎ』『うこん』『かばのあなたけ』など二十数種類の穀物、木の実、きのこ類などをブレンドしたものを、腰に下げた鹿の皮袋に入れて持ち歩いていて、よく食べていた。
石川先生は、これを「健脳忍者食」と名づけていた。十数年の歳月をかけて研究した末に考案したもので、免疫力を高め、栄養価が高く、腹持ちがよく、保存も利くので、忍者食としては最高なんだって。商品化して、売り出そうと真剣に考えている。
『サスケ』も先生に勧められて食べてみたけど、思ったほど不味くはないと思った。しかし、お世辞にも美味しいと言える代物ではない。
『サスケ』が習っている忍術の訓練とはまだ初級から中級の段階で、庭に落ち葉を敷き詰めて、その上を音がしないように歩くとか、自分の背より高い塀をよじ登って越えていくとかである。『サスケ』は自分の動きが機敏になり、身のこなしも軽くなったような気がしてきており、忍術の訓練が楽しく感じるようになってきていた。
最近訓練しているのは水渡りの術といって、水の上にゴザを浮かべてその上を走ること。右の足が沈む前に、左の足を前に出し、さらに左の足が沈む前に右の足を前に出す。そうすれば沈むことなく水の上を走れるという理屈だけれど、これがとてつもなく難しい。
最初のうちは一歩も進むことが出来なかったが、最近やっと三歩目が出せそうになった。これが出来るようになると、橋の掛かってない堀とか湖とか走って渡ることが出来るようになるのである。
ゴザが無くても、例えば、睡蓮の葉が茂った沼なら、その上を走り抜けることもできるようになる。
これをマスターしたら次は、燃えさかる火の中を潜り抜ける術、水の中にもぐって歩く術を教えてくれることになっていた。
それまで待ちきれない『サスケ』は、時々友達と銭湯に行ったときに、湯船にもぐって何分息を止めていられるか競争している。運悪く、一番風呂が大好きな銭湯の主みたいなおじいさんに「お風呂で遊ぶんじゃない。」って叱られることも時々あったが、その場は一旦止めるが、おじいさんが風呂から上がるや否や、早速続きをするのだった。
一時が万事、日々の生活そのものが『サスケ』にとって忍術の修行そのものであった。

忍者通信(2)に続く


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posted by 冬野☆男 at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 第1章 出航 忍者通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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