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2006年08月29日

第2章 大航海 いるかのグリッピー

復習する


いるかのグリッピー

海はこの日もべた凪で、穏やかな航海が続いた。
昼頃何処からともなく、イルカの群れが現れ、『カメレオン号』と競争するように泳ぎ回っていた。その数はおよそ40頭の大群だった。
子供たちは大喜びで甲板に出て、いるかの泳ぎを眺めていた。
「キットあのイルカさんがリーダーだわ。」
と、サキちゃんが言った。
「どうしてそんなことが判るんだい。」
と、『学者』君が聞いた。
「だって、あのイルカさん群れの前に行ったり、後に行ったりして絶えず仲間のことを気遣っているように見えるよ。間違いなくリーダーだわ。」
と、サキちゃん。
「良く観察しているね。サキちゃんは。」
と、高校生のノッポ君。
「サキちゃん、イルカさんとお話してみないかい。」
と、言いながら、学者君は甲板から集音マイクのようなものを海中へと降ろし始めた。
これは、犬の鳴き声翻訳機『バゥリンガル』を開発した玩具メーカーの技術者とドクター大松が共同開発した『イルカ語翻訳機』だよ。
イルカはいろいろな音を出して仲間とのコミュニケーションに使っているらしいことは良く知られているが、人間がイルカと直接会話をすることは出来なかった。それを可能にしたのが、この翻訳機『バゥリンガル・イルカ』なんだって。
ドクター大松さんは「くじら、イルカ、犬、猫語の翻訳機はすでに完成した。ペットや野生動物の翻訳機は作っていても楽しいが、食料にするのを目的に飼育している家畜用の翻訳機は作る気がしない」と言い、決して作ろうとはしなかった。
「病気になった家畜を医者に診てもらって、病気が良くなったらと殺場へ連れて行くという畜産家の気持ちにはなれない。」とも言っていた。
「サキちゃん、このヘッドフォンを耳に当ててごらん。」
と、言って学者君は、サキちゃんにマイク付きのヘッドフォンを手渡した。
「何か話しかけてみてごらん。」
という学者君の声に促されて、美咲ちゃんはイルカに話しかけた。
「イルカさん、泳ぐのがとても上手ね。私の名前は美咲です。あなたのお名前は。」
「ボクノ名前ハ、ぐりっぴーデス。」
と、イルカのリーダーは答えた。
「すごい!!」
「本当にイルカさんとお話ができるわ。夢みたい。私感激だわ。」
と、サキちゃんは大喜び。
「あなたたちは、何処まで付いて来てくださるの。私たちはずっとずっと遠くへ行くのよ。」
「ヤタガラスノ勘三郎サンニ、コノ船ノ水先案内ヲスルヨウニ言ワレマシタ。」
と、グリッピー。
「えっ、ヤタガラスさんが、イルカさんたちに私たちの道案内をするように頼んだの。あのヤタガラスさんの名前は勘三郎っていうんだ。それであなたたちは船の周りを泳いでいるのね。でも、何故勘三郎さんはあなたたちにそんなことを頼んだのだろう。メノウの勾玉は置いていくし、本当に不思議な鳥だこと。」
「ワタクシタチニハ、ワカリマセン。タダ言エルコトハ、勘三郎サンガ、コノ船ガ来ルノヲ待ッテイタトイウコトデス。」
「コノ先ニ、非常ニ危険ナ海域ガアリマス。ソコデハ、磁気嵐ガ常ニ発生シテイテ、ワタシタチノ体内コンパスモ狂ワサレマス。デスカラ、ソノ手前マデシカゴ案内デキマセン。」と、グリッピーはすまなそうに言った。

忍者通信3号へ続く

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