最近のコメント

2006年09月01日

第2章 大航海 魔の海域

復習する

嵐の海域

「残念ナガラ私タチハコレ以上先ヘハ進メマセン。」グリッピーが言った。
「コレカラ先ハ、磁気嵐ガアリ私タチノ方向感覚ガ狂ワサレテシマイマス。私タチノ仲間ガ大挙シテ海岸ニ乗リ上ゲテ死ニイタルコトガアリマスガ、アレハ磁気嵐ノセイナノデス。本当ハズットオ供ヲシタイ気持チデイッパイナノデスガオ許シ下サイ。」イルカたちは別れを惜しみながら、今泳いできた途を戻っていった。

「諸君、我々の船『カメレオン号』はもうすぐ目的の海域に到達する。」
と、海江田船長が力強く言い、続けて、
「私たちの目的は、この海域の海底に眠るある鉱物を採集することである。ある鉱物と言うのは、我々が『フー岩』と名づけたのだが、空気より軽い鉱物である。」
「空気より軽い鉱物だって。」
「そんなものあるわけ無いじゃん。」
と、子供達は口々にいう。
「常識的には、大気より軽いものは、地球が出来上がる過程で宇宙へ飛び出して行った。と、考えるのが普通だろう。」
と、海江田船長。
「しかし、広い地球上のこといろんなことが起こっても不思議が無い。現に、二酸化炭素が海の中で、液体になって貯まっているところがある。皆も知っていると思うけど、二酸化炭素は、固体ではドライアイスと呼ばれ、それが溶けると二酸化炭素ガスになる。つまり、液体の二酸化炭素は存在しないのに、海中には二酸化炭素のプールがある。
灼熱の地球が長い年月を経て固まってから後に、フー岩の原料の鉱物が宇宙から飛んできて偶然にも地球に捕捉されたということは考えられないだろうか。以前にも言った様に、あの海域は小惑星が衝突した場所で、磁気異常が見られる。更に、質量異常、つまりあの海域の岩石の質量が異常に少ないことが判明している。どうやら衝突した小惑星が、衝突した時のスピードとエネルギーとで地球の岩石を溶かし、混ざり合ってしまったようだ。陸地に衝突したところも同じようになったが、高温のためどろどろに溶けて、軽いものは大気に放出され、再び宇宙へ旅立っていった。一方、海に衝突した方は、海水によって急激に冷されそのまま固まってしまった。と言うのが我々の仮説である。いずれにしても、そこに空気より軽い鉱物が存在すると言うことは紛れもない事実だ。」
と、船長は続けた。
「その鉱物を利用して、我々は宇宙船を作る。今までの宇宙船はロケットの推進力を利用して大気圏から離脱していったが、我々は、フー岩の浮力を利用して宇宙に飛び立つ技術を開発した。火薬や化石エネルギーはほとんど使わないことになるから、打ち上げの時の危険度を格段に軽減できる。考えてもみたまえ、宇宙を飛んでいる隕石や彗星、小惑星、恒星にはエンジンのような推進力をつけるものはなにもない。しかし、とてつもない早さで宇宙空間を飛んでいる。要するに宇宙空間を飛行するには燃料はいらないんだよ。」
ドクターが得意げに解説した。
いつの間にか積乱雲が成長してきて、今まで穏やかだった天候が暴れだした。
空は見る間に掻き曇り、大粒の雨が船体にたたき付けてきた。
雷鳴がとどろき、稲妻が炸裂する。
『カメレオン号』は、波間に揺れる木の葉のように翻弄される。
子供たちは、船室に一塊になり毛布をかぶって震えていた。
今までに経験した暴風雨や嵐など、とても足元にも及ばないほどのすさまじさだった。
海は益々凶暴になり、大きなうねりとなって『カメレオン号』に襲いかかる。
うねりがだんだんせり上がってゆき、頂点に達したかと思うまもなく、ワイヤーを切られたエレベーターのように急降下を開始する。
いくどとなく続く急降下に、ほとんどの乗員が船酔いにかかっていた。
暴風雨に襲われてはや、丸1日が経とうとしていた。
乗員の体力も既に限界に達していた。
「何とか抜け出さないことには、この船は持たないぞ。」
海江田船長は、『カメレオン号』を暴風雨から避難させるべく、操縦桿を握っていたが、思うように操れない。船長の意思に反して、『カメレオン号』は暴風圏の最深部へと進んでいく。
うねりはなおも勢いを増し、『カメレオン号』は百メートルをはるかに超す波頭の頂点にあった。そのまま絶叫マシンのように急降下し始めた。このまま行けば船は壊れる。海江田船長は本心そう思った。
『カメレオン号』が急降下し始めた刹那、頭上で凄まじい音響の雷鳴がとどろき、閃光が炸裂し、落雷した。
と、誰もが感じた。

船は跡形もなく海面から消えた。
時空の結界を越えた。

第3章 怪奇島 巨石像(1)へ続く
posted by 冬野☆男 at 10:20| Comment(0) | TrackBack(2) | 第2章 大航海 魔の海域 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック


Excerpt: 磁気嵐磁気嵐(じきあらし、Magnetic-storm)とは、通常、中緯度・低緯度において全世界的に地磁気が減少する現象のことを指す。典型的な磁気嵐では、地磁気は数時間から1日程度の時間をかけて減少し..
Weblog: 電磁気学・磁気関連についてのWEB
Tracked: 2007-08-08 12:50


Excerpt: 磁気嵐磁気嵐(じきあらし、Magnetic-storm)とは、通常、中緯度・低緯度において全世界的に地磁気が減少する現象のことを指す。典型的な磁気嵐では、地磁気は数時間から1日程度の時間をかけて減少し..
Weblog: 電磁気学・磁気関連についてのWEB
Tracked: 2007-11-24 16:06
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。