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2006年09月11日

第3章 怪奇島 光のへそと天の岩戸伝説(1)

光のへそと天の岩戸伝説

アドルフさんは、巨石像の多い南東の地区を案内してくれると申し出てくれた。
『サスケ』たちは、アドルフさんの進言に従うことにして、アドルフさんにも、エアーセグウェイを用意した。
自動車は、完全自動制御が義務付けられて、交通事故は皆無になっていた。ボタンひとつで目的地まで安全に輸送してくれる仕組みが普及し、2031年を境にして、交通事故は死語になってしまった。
どうしても運転のスリルを味わいたい輩は、決められたサーキットでマニュアル車や二輪車を運転することは許されていた。
運転免許証も必要なくなったが、希望者は身分証明書代わりに持つことは出来た。
エアーセグウェイは二輪車や自転車に代わる乗り物として普及していたし、オリンピックの正式種目にも採用されていたが、もちろんこの島には無かった。
アドルフさんは、最初こそおっかなびっくり操作していたが、こつをつかむのが早く、瞬く間に自在に乗りこなすことが出来た。『サスケ』はそのうち、アドルフさんと競争をしてみたいと思った。
南東に向かって平坦な道をしばらく進むと、大きな石碑が現れた。石碑には、こう刻まれていた。

『島民心得』
生かされている身の 有り難さを知ること
二度無き人生を 精一杯生きること
他人の痛みのわかる 心優しい人であること
言葉づかい、姿勢を正しくすること
ふるさとを誇りとし 隣人を愛すること
思い定めたことは 必ずやり通すこと
他人のために 汗を流すこと
他国の平和を 乱さぬこと

この島の人たちは、心の優しい人たちなんだろうなと、『サスケ』は思った。そして、世界中の人たちが、こんな気持ちになったら地球上から人間同士のいさかいが無くなるんだろうなと、思った。
2qほど南東に進むと、巨石像が現れたが、ここの巨石像はほとんどがうつぶせに倒れたままになっている。
「ここには、【光のへそ】と呼ばれている、丸くて不思議な石があります。」と、アドルフさんは話しかけてきた。
倒れている巨石像の直ぐ近くに、【光のへそ】はあった。周りは、ごつごつした岩や石ころだらけなのに、それはジャイアントモアの卵位の大きさがあり、丸くてつやつやした不思議な石だった。石の成分もこの辺にあるありふれた石とは明らかに違っていた。
この【光のへそ】は、どこかで作られて、ここに持ってこられた。何かの目的があって。『サスケ』は、何の根拠もないのに直感でそう思った。
よく見ると、模様のような、文字のような物が表面に彫ってあるのが見える。
「これは、ロンゴ・ロンゴという文字といわれていますが、この島にはこの文字を読める者は残念ながら一人もおりません。」と、アドルフさんが言った。
「ただ、【光のへそ】に関する言い伝えはあります。」と、アドルフは続けた。
「言い伝えって、どんな内容ですか。もしも、よろしかったら話していただけないでしょうか。」ノッポ君が尋ねた。
「昔々、新月の夜に、東の空が急に明るくなり、大きな火球が飛んできた。火球はアナケナの北東の海洋に着水した。夜が明けて、着水したあたりを調べて見ると、人工的に加工されたと思われる、球状の石が見つかったのです。その石が【光のへそ】いわれるものなのです。【光のへそ】が天の岩戸を開く。と言い伝えられていますが、天の岩戸がどこにあるのか、今では島の長老たちでさえ知らないのです。さらに、天の岩戸が開いたとき天変地異が起こる。そのときのために、ノアの箱舟を用意しておかなければならない。わたしたちは、百年に一度新しい船を造り、天変地異に備えております。」と、アドルフさんは言った。
「これは驚いた。今度は天の岩戸のお出ましだ。」と、ノッポ君。
「日本神話では、日の神アマテラスオオミカミがスサノウノミコトの暴挙に立腹し、岩屋戸に隠れてしまった。世界は闇に閉ざされたので、ヤオヨロズの神々が困ってしまった。一計を案じて、岩屋戸の前で踊りを踊ったり、大騒ぎをしてアマテラスオオミカミの気を引いた。作戦が成功して、アマテラスオオミカミが岩戸を少しあけて覗いたときに、岩戸をこじ開けて闇の世界から脱出することができた。
そんな粗筋だが、皆既日食のことを表しているという説と、一年の内で一番昼の時間が短い冬至のことを言っているという説がある。
農耕民族である日本人の祖先は季節の変化を敏感に感じていた。たぶん冬至の日が、一年の区切りの日になっていたのだろう。一年の区切りの日に、踊りを踊り、お供えをして、新たな一年の無事をお祈りする。きわめて自然な成り行きだ。
日食の起きる原理を知らない人たちにとって、いきなり太陽が隠れてしまい、昼が闇の世界になってしまうのだから不安になるのは当たり前の話である。早く太陽がお出ましするようお祈りするのも当然だろう。」と、ノッポ君は得意げに説明した。
「ところで、この島の伝説光のへそと天の岩戸の話は興味をそそるな。天の岩戸が特定の場所を指すのか、あるいは、日本神話のように何かの現象を指しているのか。」と、博士君。
「アドルフさん、親切にしていただいたお礼に、ぼく達に謎解きの手伝いをさせてください。謎解きが出来るか、ちょっと自信がないけど。」
「それはありがとう。今まで、誰も解くことが出来ない難問で、天の岩戸なんて存在しないんじゃないかと思うようになってきて、今では、本気で探そうという者はこの島には誰もいなくなってしまった。」
『サスケ』達は、アドルフさんから、天の岩戸伝説を詳しく聞いたが、問題を解く鍵は見つからなかった。
島の大人が、何百年も探して見つからない謎が、よそ者の『サスケ』達がちょっと話を聞いただけで、手がかりが見つかるほど甘くはない。

光のへそと天の岩戸伝説(2)へ続く



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