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2006年09月12日

第3章 怪奇島 光のへそと天の岩戸伝説(2)

復習する

島に上陸してから、5日目の朝を迎えた。いつものようにアドルフさんが笑顔でやってきた。
「おはよう。今日はとてもいい話を持ってきたよ。長老様が君たちのことをとても気に入って、今夜歓迎の夕食会を開くので、ぜひ出席して欲しいと言っておりました。」
最初にあったときは、一日も早く立ち去って欲しいというような雰囲気だったのが、なんという変わりようだろう。
その晩、船長を始め『カメレオン号』の皆は長老の招きで、夕食会に出かけた。
宴会は、村人が総出で出席し、できる限りのご馳走が振舞われた。
バナナの料理や魚料理は味付けが淡白だったが、美味しかった。ココナツミルクで芋と野菜と豚肉を煮たスープはとても美味しかった。
皆が食傷気味だったのは、イグアナの丸焼きとこうもりの姿煮だった。そんな中で、平気でぱくついていたのは、大学で探検部に所属している『サカナ』さんだった。
「これ美味いぞ。お前らも食え。」
「この味は鶏の味に近い。美味、美味。」と一人悦に入っていた。

宴もたけなわになったころ、クプクプ長老は島に伝わる、もう一つの伝説を話し始めた。
「昔々、はるか昔、この島には相対立する二つの力の強い部族がおった。北に住む部族がカリマ族、南に住む部族がハンナン族と言った。互いに相手の部族を征服してやろうと野心満々だったから、常に戦が絶えなかった。次第に、戦いはエスカレートし、このままでは双方の部族が滅亡してしまう、そんな危機的状況を呈してきた。
今日こそは雌雄を決しようと、互いに鬼のような形相で戦いの場に臨んでいた。こんな無意味な戦争に心を痛めていた、カリマ族の弓の名手、ナスノヨイチは、渾身の力を込めて弓を引いた。解き放たれた矢は、空に向かってぐんぐん上昇し、とうとう太陽に命中した。
ナスノヨイチの矢で射抜かれた太陽は、にわかに光を失い、次第に闇が迫ってきた。今まで暖かかった空気がひんやりと冷たくなり、とうとう雪まで降り出した。この島で雪が降ったのは、このときが最初で最後と言われている。とうとう島は漆黒の闇に包まれた。部族間のルールで、戦争は日の出から日没までと決められていたので、戦いは休戦となった。
互いの部族の長は、自分たちがいつまでも戦争を止めないでいることに、太陽の神(天照大神)がお怒りになって、お隠れになったと思った。互いの部族の長は膝を折って話し合い、今後はいかなる事があっても戦争はしないと誓い合った。戦争の代わりに、双方が大きな石像を建て、相手の石像を倒した方が勝者とするゲームが行われるようになった。勝者には、1年間、島で最高の漁場を独占する権利が与えられた。相手に倒されにくくする為に、出来るだけ重たくて大きい石像を作るようになってきて、御覧のような巨大な石像が島のいたるところに存在するようになった。島のあちこちに巨石像が倒れているのはそのためなのだ。
太陽の神に対する感謝の気持ちと信仰心を失わない為に、光のへそを奉るようになった。島民憲章は、戦争の無意味さを忘れない為に起草され、島民の集まりでは、唱和するようになっている。この島では、言葉の話せるものは幼児でも島民憲章を空で言えるよ。これがこの島の憲法だよ。」
「まだ製作途中の石像があるようだけど、あれはどうしたのですか。」と学者君。
「石像は、はじめは等身大の大きさだったのが、自分たち部族の力を誇示するうちに、次第にエスカレートしていき、ドンドン大きくなってきた。1年では造れなくなってきて、完成までにとうとう10年も掛かるようになってしまった。したがって、何年も先の石像も同時に製作していったのじゃよ。」
「あるとき、誰も今までみたこともない巨大な鉄の黒船がやってきて、この島に上陸した。彼らは雲をつくような大男で、鼻は天狗の鼻のように高く、途中から鷲のくちばしのように折れ曲がっていた。目の色は青く、髪の毛は燃える火のように真っ赤だった。それは、まるで鬼のようだった。」クプクプ長老は、ここまで一気に話すと、一呼吸いれ、悲しげな目になった。
「彼らは、先に穴のあいた、長い鉄の棒を持っており、その鉄の棒の先から火の玉が飛び出し、生き物を一撃で倒した。彼らは、われわれよりはるかに高度な文明をもっていたが、文化は最低だった。
自分たち以外の人間は、人間でないと信じ込んでおり、自分たちの宗教が最高だと思っているものだから、力に物を言わせて、われわれを制圧した。
そして、自分たちの信じる宗教をわれわれに押し付けた。われわれがよそ者を快く思わないのは、そんな歴史的過去があるからなのじゃ。
別にあなたたちを嫌いなわけではない。」クプクプ長老は、吐息を漏らした。
「石像の目は、製作当初は金や銀、宝石などがちりばめられていたが、彼らによってすべてえぐりとられてしまった。島にある石像に目が無いのはそのためなのだ。」
「長老様、アドルフさんから聞いた話では光のへそが天の岩戸を開くという言い伝えがあるそうですが。」と、ノッポ君が尋ねた。
「アドルフが君たちに話した天の岩戸伝説は、カリマ族に伝わる伝説で、あの紅毛碧眼のよそ者が暴れ回っているときに、部族の大切な宝物を天の岩戸に隠したといわれている。その天の岩戸がどこにあり、当時隠された宝物もどんなものなのか、誰も知らない。光のへそにそれを解くカギがあるといわれているが、いまだに解けない謎なのだよ。」と、クプクプ長老は言った。
「なんだか夢があるな。ぼくわくわくしてきちゃったよ。」と『サスケ』は言った。

「おやびん。面白いことになってきましたよ。天の岩戸伝説ですよ。金銀財宝がザクザク眠っているでがすよ。」
「運が向いてくるかもしれないな。しばらくは目を離さないようにしないとな。」
「しかし、サスケ君は忍術の腕を格段に上げたな。先日タスマニアフクロオオカミに襲われたときも、冷静沈着で、九字の印を切ったし、煙玉の選択も正しかった。毎日筋トレも欠かさないようだし、短期間にこれほど上達するとは思っても見なかった。たいしたものだ。この分では免許皆伝を与えるのも、そう遠くはなさそうだな。」
「免許皆伝はちょっと早いんじゃないの。落語の世界でも、前座から始まって、二つ目、真打ちと段階を経るんでガスよ。だいたい真打ちになるまで10年は掛かりますよ。それをいきなり免許皆伝なんて、おやびんはいくら気前が良いからと言って、良すぎますよ。あたしゃ知りませんからね。」
「何をすねてるんだい。おかしな奴だね。まったく。落語の世界だって、真打ちになってからが大変なんだよ。真打ちになったことで、やっと自分も一人前に認めてもらったと感激して、なおさら精進するってもんじゃないか。わしだって、人を見る目はあるよ。サスケ君が免許皆伝をもらって、有頂天になって伸びなくなる奴か、より一層精進に励む人間か、見分けられるよ。」
「分かりましたよ。なにせ、あたしが免許皆伝を頂いたのは確か39歳の時で、それまで21年掛かりましたから。サスケ君の上達がうらやましかったんですよ。」
この二人組が、島の中で何をしているのかはいまだに皆目わからない。どこに潜んでいるかも謎のままである。ただ、『カメレオン号』の仲間たちのそばにいることだけは間違いないようだ。
第3章 怪奇島 (完)

第4章 黄泉(よみ)返りの森 忍者通信5号(1)へ続く

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