最近のコメント

2006年09月15日

第4章 黄泉(よみ)返りの森 第一次隊(1)

復習する

第一次隊

とうとう出発の日が来た。
 アドルフさんは、早くから来ていて、サスケ達の装備の手伝いをしてくれた。
 「防水のジャケットと、寝袋は忘れないで下さい。黄泉返りの森は1年に400日雨が降ると言われるほど、良く雨が降ります。それで植物が良く成長し、ジャングルのようになっています。」
 食料は、レトルト食品と乾燥食品が主で、宇宙船で食べられているチューブ入りの宇宙食も若干持った。
サスケは、念のため忍者食も持って行くことにした。意外と腹持ちが良いし、栄養価も高いし、保存が利くのが何よりさ。
 「さあ出発するぞ。」キャプテンが声をかけた。
 「おー!」皆は、一斉に声を上げた。
 サスケは、恐怖心を打ち消すために『鬼』と言う字を、山での遭難を避ける意味で『虎』と言う字を、そして、気持ちが前向きになるよう『大』と言う字を、右手で左の手のひらに書いた。
 とたんに、気持ちがしゃきっとした。
 アドルフさんを先頭に、一行は歩き始めた。
 黄泉返りの森の麓までは、すでに何度も探検済みなので、みんなは冗談を言い合いながら和気藹々歩いた。タスマニアフクロオオカミが出没するポイントでは、さすがにちょっと緊張したけれど、出くわすことは無かった。
 途中で、ジャイアントモアの親子連れに遭った。
 この前遭ったときは、子供のジャイアントモアはいなかったはずだから、最近生まれたらしい。それでもすでに、親鳥の背中ぐらいの高さに頭があり、首を左右に振り振り歩く姿は母親と変わらない。
 しかし、何かに驚くと、親鳥の背後に隠れるように回り込む。そして、長い首を一層長くして、何事が起こったかと視線をこらす仕草がかわいらしい。
 身体が大きい割に、表情や仕草が愛らしいとサスケは思った。こんな素晴らしい動物を絶滅させた人間は本当に許せないと心底思った。

 「しばらく休憩しよう。」
 キャプテンが言った。
 一行は手頃な岩や、倒木に腰を下ろして休憩することにした。
 「アドルフさん。この島にはどんな動物が棲んでいるんですか。」
 「そうだね、ジャイアントモアほど大きくはないけど、『ドードー』という鳥がいるよ。」
 「ドードーがいるの。そいつはすげーや。ドードーって17世紀に絶滅した鳥で確かアフリカのモーリシャス島に棲んでいたんだよね。この鳥が絶滅したために、カルヴァリアという植物も絶滅したんだって。」
 「あたしドードーって知ってるわ。」とサキちゃん。
 「たしか、ルイス・キャロルという作家だったと思うけど、不思議の国のアリスというお話しの中にドードーって鳥が出てきたわ。あの鳥でしょう。」
 「そうだよ。たいしたもんだね、サキちゃんの記憶力は。」
 「あら、それほどでもないわ。」
 サキちゃんは、まんざらでもないという顔をして、鼻をちょっとひくつかせた。これは本人は気づいていないけど、サキちゃんの得意なときの癖なんだ。
 「カルヴァリアの木はどうして絶滅したの。」
 「ドードーはカルヴァリアの木の実が大好物だったんだ。この木の実を食べるのはドードーしかいなくて、ドードーが絶滅したので、カルヴァリアが絶滅したんだよ。」
 「良くわかんないよ。ちゃんと説明してよ。食べる動物がいなくなれば、逆に増えるんじゃないの。」とサキちゃん。
 「ところがどっこい、こいつが違うんだな。カルヴァリアの木の実は堅い殻に覆われていて、その殻が邪魔をして、自然には発芽できないんだ。ところがドードーに食べられたカルヴァリアの木の実の殻は、半分消化され、糞と一緒に排泄される。殻はもろくなったけど、中の胚乳は未消化だから無事というわけ。半分消化されもろくなった殻は破れやすくなり発芽できるというわけさ。おわかりかな。サキちゃん。」と学者君。
 「なるほどそう言う訳なのか。持ちつ持たれつの関係にあって、共存共栄していたわけね。自然界のバランスって、本当に微妙なバランスで成り立っているのね。そしてそのバランスを崩すのは、いつも人間という訳ね。」とサキちゃん。
「そういえば、東京ではカラスが繁殖しすぎて、ゴミ置き場を荒らすので、カラスを捕まえることにしたら、今度は鳩が急激に増えたので鳩にえさを与えないようにということがあったね。元を質せば、人間がゴミの管理をしっかりして、野生動物にむやみやたらにえさを与えなければ、こんな問題は起きないと思うんだよ。
こんなに文明が進歩したのに、人間は人類が出現したときからゴミ問題に取り組んでいる。貝塚なんて言うのは、昔の人のゴミ捨て場だよね。おかげで、その当時の文化とか、気候とかが分かるんだよね。」とサスケ君。
「そうだね。貝殻や、動物・魚の骨などで作った、釣り針などの道具も見つかっているし、木の実や植物の種なども出てくる。そのものに含まれる炭素を調べると、細かい年代まで測定することが出来るんだよ。」と学者君。
「それじゃあ、東京の夢の島なんかも、何千年も先には、ぼく達の暮らしぶりが分かると言う寸法か。でも、今は、細かく粉砕したり破砕して処理しているから、復元するのは大変だろうな。それと、高温で燃やしているから、跡形もなくなってしまって調べることすら出来ないかもしれないね。」とサスケ君。
「青森県の下北半島には北限のニホンザルがいて、大事に保護されてきたが、保護しすぎて数が増え、今度は農作物を荒らすようになった。仕方なく、村ではニホンザルを捕獲することにした、と言う笑えない話もある。野生動物に人間があまり干渉してはいけないんだ。かといって、保護しないと絶滅するおそれのあるレッドマークの動植物は、放っておけないよね」と学者君が続けた。
「外国からも、様々な動物がペットとして輸入されているけど、何らかの理由で、野生化して増えすぎて被害が出てきているよね。アライグマなんか小さいときはぬいぐるみみたいにかわいいけど、意外と凶暴で飼い主が持て余しちゃう。飼いきれなくなって、山や野原に捨てたのがいつの間にか繁殖して、被害をもたらすという訳ね。ペットを買う人は最後まで責任を取らないといけないわよね。」と、サキちゃん。
「ペットだけじゃないよ。沖縄では、毒蛇のハブの天敵としてマングースを島に持ち込んだけど、ハブは一向に減らないで、マングースだけが繁殖していった。マングースは元々雑食でハブを好んで食べる訳じゃないからね。他に食べるものがあれば、好きこのんで危険な毒蛇を捕まえようなんてことはしないだろう。
西表島でヤンバルクイナという新種の鳥が発見されたけど、この鳥も絶滅の危機に瀕しているんだ。ヤンバルクイナは飛ぶことの出来ない鳥で、地上を歩き回っているときにマングースに襲われることが多いらしい。それと、人間の飼っているペットの猫もヤンバルクイナを襲うらしいよ。」と、学者君。
第一次隊(2)へ続く


2006年09月18日

第4章 黄泉(よみ)返りの森 第一次隊(2)

復習する


第4章 黄泉(よみ)返りの森 第一次隊(2)

10分ほど休憩し、「さあ、そろそろ出発しよう。これから先は、いよいよ黄泉返りの森だ。細心の注意を怠らないように。」とキャプテンは注意を促した。
サスケはもう一度、「十字法」の『鬼』、『虎』、『大』の字を左の手のひらに、力強く書き、握りしめた。
黄泉返りの森に、一行はとうとう足を踏み入れた。もう後戻りすることは出来ない。
うっそうと茂った森は、人為的に造られた道など一本もなく、地上に届く光もごくわずかで、薄暮のような暗さだった。
悪戦苦闘しながら一行は進んだが、蔦のようなつる性の植物が行く手を阻み、いばらのようなとげのある茂みは容赦なく肌に突き刺さった。進んでも進んでも、果てしないジャングルが延々と続いていた。まっすぐ進みたくても、進めないところが随所にあり、磁石はあっても、思った方向に行けるわけでもなく、無いよりは有った方がましという状態だった。
 地表には、背丈ほどもあるシダ類が繁茂し、倒木は朽ち果てて苔むし、食虫植物が大きな罠を仕掛けていた。
 地上と比べ、頭上はにぎやかで、猿やインコが盛んに動き回っていた。ぼく達が進入したのに気がついたのだろうほえざるが、盛んに声を発していた。その声は一行を威嚇しているようでもあり、仲間に何かを伝達しているようでもあった。
 何かの時バウリンガル・アニマルが役に立つかもしれないと持ってきていたので、試しにバウリンガル・アニマルのダイヤルをほえざるに合わせて聴いてみると、『見カケナイチン入者ガイル。警戒シロ。』『目ヲ離スナ。』と言っているようだった。
 バウリンガル・アニマルが役に立つことが分かって、張りつめていた気持ちが少し和らいだ。みんなの表情からも険しさが少し和らいだのが感じられた。
 「この森の住人にとって、我々は異邦人という訳か。」
 「そりゃそうだろう。何百年もの間、人間はこの森に足を踏み入れていないのだから、警戒されて当たり前。」
 「ぼく達が動物を怖がると同じように、彼らもぼくらを怖がっているかもしれない。」
 「あら、ドードーは人間を怖がらなかったから、絶滅してしまったのよね。」
 「サキちゃん、大丈夫かい。怖くないかい。」キャプテンがサキちゃんに声をかけた。
 「あら、あたしは大丈夫よ。それより、キャプテン、あなたのほうこそ腰が引けてるわよ。しっかりして下さいね。」と逆にはっぱをかけられる始末。
 サキちゃんって芯の強い子だなあとサスケは思った。
 悪戦苦闘を繰り返しながらも、少しずつ進んでいくと、突然目の前に、猫の額ほどだが幾分開けたところにでた。そこには自然の岩とは思えない、人造の石碑のように見えるものが建っていた。
第一次隊(3)へ続く


2006年09月20日

第4章 黄泉(よみ)返りの森 第一次隊(3)

復習する


第4章 黄泉(よみ)返りの森 第一次隊(3)


その岩は、全体に緑色のこけが密生しており、時代の古さを暗示していた。
 アドルフさんは腰に下げたナイフケースからナイフを取り出し、注意深くこけをそぎ落とすと、そこには文字のようなものが現れた。
 全てのこけをそぎ落とすと、確かに何かが書いてある。ぼくらには皆目判読できない文字だったが、どうやらアドルフさんには分かったらしい。
 アドルフさんは、「石碑には、こう書かれています。『これより先、神の聖域なり。何人も進入を禁ず。』」と言った。
 「と言うことは、やはりこの先に何かがあると言うことだ。」とキャプテン。
 やっとここからが本番なのか。今までの道のりが序の口とすると、相当覚悟しないと、目的地にはたどり着かないぞ。誰もがそう思った。
 一行が、緊張して気を引き締めていると、どこからともなく、うんこのような臭いが漂ってきた。
 「サスケか、おならをしたのは。」
 「ぼくおならなんかしませんよ。そんなこと言って、キャプテン、自分がしたのを他人のせいにしょうとしてるんじゃないの。根性が悪いんだから。」
 「それにしても臭いな。」
 「きっと、ラフレシアという花が咲いたのでしょう。」とアドルフさんが言った。
 「ラフレシア。」
 「花の直径が1メートルもある、世界最大の花だよ。この強烈な花の臭いにつられて、ハエが飛んできて、受粉するんだ。花は一週間ぐらいしか咲かないし、つぼみのまま開花しないこともよくあるので、ラフレシアを見ることが出来たらラッキーだよ。この近くにあるはずだ、探してみようよ。」と学者君が言った。
 臭いのする方をたよりに探していくと、肉厚で毒々しい赤い色にまだら模様をした花びらが5枚の植物を見つけることが出来た。
 茎も葉っぱもなく、直接地面から咲いたようで、不気味な植物だった。お世辞にも綺麗といえるものではなかった。
 「花の直径では、ラフレシアが一番だけど、柄の長さまで入れると、アモルフォファルス・タイタニウムという植物が世界最大の花かな。これはこんにゃく芋の仲間で、腐った肉の臭いがするといわれているよ。それで別名『死体花』とも言われているよ。それにしても、この臭いはたまらないな。」
 「学者君って、本当に何でもよく知っているのね。尊敬しちゃうわ。」
 ラフレシア探しで少し道草を食ったので、休憩を一回抜かして、進むことにした。
 森の静寂を破るように、時折、猿やインコの鳴き声がこだました。
 相変わらず、動物たちは、サスケ達の進入を警戒して、仲間たちと連絡を取りあっているようだった。

 「おやびん。思った以上に大変なジャングルでげすな。」
 「忍術を会得している、我々にとっても骨のあるジャングルだな。」
 「この先何があるんでやんしょ。」
 「そんなことなど皆目分からん。それより、道に迷わないよう目印は付けているんだろうな。」
 「任せておいて下さいよ。おやびん。こう見えても、私は追跡、尾行には自信がありますから。以前、私立探偵事務所に勤めていたことがあり、数え切れないほども尾行調査をしましたからね。結構良い収入になったんですよ。あの仕事は忍者向きですよ。
ところで、おやびんは、クライアントは男と女とどちらが多いと思いますか。」
「そりゃおまえ、男の方だろう。」
「ぶー。残念でした。女性の方が圧倒的に多いんですよ。クライアントの依頼内容は、浮気調査がダントツ一位ですね。それでね、浮気現場の写真なんか証拠を揃えるんですがね、完全に黒だというのに、認めようとしないんですね。女心は微妙ですね。それだったら端(はな)から調査なんか頼まなければ良いんですよ。」
「それが女心というモンだよ。だからおまえさんは、いつまでも独り身なんだよ。」
「とんだとばっちりだ。あたしが所帯を持たないのは、それなりの訳があるんです。」
「そりゃ初耳だ。聞かせてもらおうじゃないか。」
「そんなこと言えるわけ無いじゃありませんか。」
「それより、あの石碑にはなんと書いてあるんでやんしょ。」
「あのこけの付き方から推測すると、かなり古い代物だな。あれは。」
Raflesia01.jpg


怪物ミノタウルスへ続く


広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。