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2006年09月21日

第4章 黄泉(よみ)返りの森 怪物ミノタウルス(1)

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怪物ミノタウルス

一行は、なおも深い森の中を突き進んだ。
気がつくと、さっきまでにぎやかに鳴いていた鳥や獣の鳴き声が、いつの間にか消えていた。
辺りには、水を打ったような静寂が広がっていた。
「どうしたんだろう、あんなに泣き叫んでいた動物の鳴き声がぴたりと止んでしまったよ。」
「なんだか不気味だな。」
「一体どうしたというんだろう。」
「あいつが現れるかもしれない。」
「あいつって誰なんですか。アドルフさん。」
「しーっ、黙って。」

突然、空気を揺るがすような、地響きが伝わってきた。
地響きは次第に、サスケたちに近づいてきた。それはまるでゴジラが大地を歩いているようだった。
大木がバキッ、バキッと折れる音とズシン、ズシンと大地を踏みしめる音がすぐ近くまで近づいてくるのが判った。
「とうとう出てきたか。化け物めが。」
目の前の大木が左右に引き倒され、怪物が現れた。
頭が牛で体は人間という異形の姿をしていた。
まるで、ギリシャ神話に出てくるミノタウルスにそっくりである。
『サスケ』は咄嗟に『鬼』という字を、左の手のひらに右の人差し指でなぞった。
十字法の鬼という字は『恐怖心を消し去る』意味がある。
『サスケ』の心には、不思議と恐怖心が無くなり、勇気が湧いてきた。
更に、「臨(りん)」「兵(びょう)」「闘(とう)」「者(しゃ)」「階(かい)」「陣(じん)」「列(れつ)」「在(ざい)」「前(ぜん)」と早口で唱えて、それに合わせて九字の印を切った。
『サスケ』の心が落ち着いてきた。

「お前達、何しにやってきた。ここを『黄泉(よみ)返りの森』と知って踏み込んできたのか。」
「返事しだいでは、皆殺しにしてやる。」
天地を揺るがすような大音響がこだました。

アドルフが答えた。
「我々は決して怪しいものではない。」
「私達は、この島に伝わる『天の岩戸伝説』を調べるためにこの森に来たのです。」
「『天の岩戸伝説』だと。そんなことを調べてどうする?」
「私達の村には『光のへそ』が『天の岩戸』を開くという伝説があるのです。」
「そのとき大洪水が起こるといわれているのです。」
「なるほど。天の岩戸は貴様達の推理どおりこの森にある。」
「えっ、本当ですか。」
「やっぱり僕達は正しかったんだ。」
「しかし、お前達には見つけることは出来ないだろう。」
「何故ですか?」
「お前達の行く手には、様々な困難が待ち受けているであろう。」
「僕達、困難なんて平気です。」
「強がりを言うんじゃない。」
「強がりなんかじゃありませんことよ。」
「これはこれはお嬢様。随分と勇ましい。」
「おじさんはなんていう名前なの。」
「わしか。わしの名前はミノタウルスというのじゃよ。」
「ここで何をなさっているの?」
「この森の番人じゃ。」
「ミノタウルスさん。貴方クレタ島に帰りたくないの。」
「何故わしの故郷がクレタ島とわかったのじゃ。」
「やっぱりそうなのね。ギリシャ神話に貴方のことが書いてあるわ。」
「可哀想なミノタウルスさん。」
「そりゃあ、帰りたくも無くもないが、番人の仕事もあるでよ。」

ミノタウルス
ギリシャ神話に、ミノタウルスという怪物がいる。頭が牛で体は人間という異形の姿をしている怪物である。ミノタウルスは、父であるクレタ島の王様ミノスが、ポセイドンの神(海の神)へ貢ぎものをしなかった報いとしてこの世に生を受けた。ミノス王が、貢ぎ物をしないことに腹をたてたポセイドンは、牡牛を使わせて、ミノス王の妻を誘惑させる。そして生まれたのが、怪物ミノタウルスだった。ミノタウルスは、生まれながらにして、人に疎まれ嫌われる宿命を背負って生きることになる。


「わしの仕事は、この森に入ってきた奴は、なんびとたりともこれ以上奥には入れさせないことだ。」
「但し、わしの出すなぞなぞに答えられれば、通ってもいいぞ。」
「なぞなぞですか。」
「さあ、どうする。」
ミノタウルスは、いかにも獰猛そうな目を光らせて、にやりと笑った。
「それが出来なけりゃ、奥へはいけないのだから、やってみようよ。」
怪物ミノタウルス(2)へ続く




2006年09月23日

第4章 黄泉(よみ)返りの森 怪物ミノタウルス(2)

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mino.jpgミノタウルス像(画像をクリックすると大きくなります)
「中々物分りがいいな。小僧。名前は何と言う。」
「おいらかい。おいらの名前は海江田明だよ。でも皆はサスケと呼んでいるよ。」
『サスケ』は落ち着いて答えた。
 『九字法』の印を結んだお陰で、サスケの心は非常に落ち着いていた。
 「サスケか。いい名だな。」
 「そうですか。実は僕も気に入っているんです。」
 「ところで、おまえたちは、天の岩戸を見つけてどうする気じゃ。」
 「だから、さっき言ったでしょう。おじさん頭悪いね。」
 と、サキちゃん。
 「何だと。頭悪いだと。俺様が一番気にしていることを言いやがって。もう、頭来た。」
 「私達は、天の岩戸を見つけて、洪水を防ぎたいの。」
 頭に血が上ったミノタウルスはサキちゃんの話など上の空。
 「いいか、問題を出すぞ。」
 「水はあるが火はない。砂はあるが土はない。花はあるが草はない。さあ、これは何かな?」
 「あるなしクイズか。」
 「さあ、どうだ。参ったか。」
 「うーん。」
「うーん。」
「あーでもない。」
「こーでもない。」
「さあ、どうだ、降参か。もうそろそろマイムリミットだぞ。」
「一寸待ってよ。」
「判ったワ。ミノタウルスさん、ヒントありがとう。」
「何だと。わしはヒントなど出しておらん。」
「答えは、時計ね。貴方がタイムリミットておっしゃったじゃない。ありがとう。」
「これはしくじった。わしとしたことが。」
「仕方が無い。約束じゃから通してやるが、何があってもわしは知らんぞ。」
「そうだ、これを持って行け。」
ミノタウルスはそう言うと、腰に下げた袋の中から、何か取り出した。
それは、サスケが首から提げているメノウの勾玉と形と大きさが同じヒスイの勾玉だった。
「お前の持っているメノウの勾玉と、このヒスイの勾玉がきっとお前達の手助けをしてくれるだろう。」
「ミノタウルスさん。ありがとう。」
サスケは、ヒスイの勾玉の穴に紐を通し、メノウの勾玉と一緒に首からぶら下げた。
「貴方は、どうすればクレタ島へ帰れるの。」
「わしにも判らんのじゃ。」
「私達にできることがあったら、協力してあげるからね。」
サスケたちは、無事に通してもらうことが出来た。

 「サスケ君は、実に落ち着いていますね。おやびん。」
 「そうじゃな。しっかり修行を積んでいる証拠だな。頼もしい限りだ。」
 「しかし、あのミノタウルスも恐ろしい形相をしているから、大暴れするかと思いきや、なぞなぞだってよ。」
 「なぞなぞなんて、小学校以来ですかね。」
 「私は結構得意だったんですがね。」
 「上は大水、下は大火事なーんだ。」
 「答えはお風呂だろうけど、今どき五右衛門風呂やガスで風呂を沸かす家なんか無いから、そんな古典的ななぞなぞは今どきの若い連中にはわからんよ。」
 「それじゃ、こんなのはどお。削れば削るほど多くなるものなーんだ。」
 「またまた懲りずに、超クラシックななぞなぞだな。それは、鉛筆の削りかすだろう。今どき鉛筆なんて使わないし、判るのはせいぜい俺達の年代までだよ。」
 「おっと、見失ってしまう。」
 「気をつけて行こう。」

「ミノタウルスさんて、あんなに怖い顔をしているから、一時はどうなるかと思ったけど、意外と紳士だったわね。」
 「トンボ君は震えていたわよ。大丈夫。」
 「だって、本当に怖かったんだもの。チ○ポが縮んじゃったよ。」
 「何よ。レディーがいることを忘れないでね。それって、セクハラよ。」
 「ごめん、ごめん。」
 相変わらずあたりは木々がうっそうと茂り、昼なを暗いジャングルだったが、一行は前へ前へと前進していった。

 一行の上空を1羽の黒い影が旋回していたが、ことの成り行きを確認すると何処かへ飛んでいった。
IMGP0185b.jpgヒスイの勾玉


怪物ミノタウルス(3)へ続く


2006年09月25日

第4章 黄泉(よみ)返りの森 怪物ミノタウルス(3)

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「サスケ君はとても落ち着いていたけど、怖くなかったの。」
 「そりゃ、ミノタウルスの顔を見たときはとても怖かったよ。正直な話。」
 「だよね。あの大きさだし。風貌も凄いもんね。」
 「でもね、九字法の印を切ったら、不思議と落ち着いてきたんだよ。」
 「忍術って、凄いんだね。」
 「サスケさん、私にも教えてよ。」
 「結構大変だよ、忍術って。」
 「平気よ。」
 「それじゃあ、浜に戻ったら基礎的なことを教えてあげよう。」
 「本当。わあ、うれしい。」
 そんな会話を続けながら、一行は森の奥へ奥へと進んでいった。
 時々、絶滅動物や絶滅植物を見かけたが、一行は大して驚かなくなっていた。
 それほど、頻繁に絶滅動物が現れるので、彼らの感覚も麻痺してしまったようだ。
「僕、思ったんだけど、黄泉返りの森って、蘇えりの森じゃないか?」
「絶滅動植物が蘇える森だよね。」
「神話の生き物もいるわ。」
「そうだよね。」
「神話も蘇えっちゃうのかしら。」
「もしそうなら、ミノタウルスさんもクレタ島に帰れるかもしれないな。」
「なんかおぼろげに見えてきたぞ。」
「だから、ヤタガラスも出てきたのか。」

一行は立ち止まり、それぞれの考えを述べ合った。
「それじゃあ、光のへそ伝説はどうなんだろうね。」
「例の『光のへそが天の岩戸を開く』というやつだよね。」
「そうそう、それだよ。」
「天の岩戸が開くと大洪水が起きるんでしょう。アドルフさん。」
「そういわれているんです。」
「天の岩戸がこの森の中のどこかにあることは間違いないようだ。」
「島に残っている古地図には、『恨みの滝』という所があります。」
「恨みの滝ですか。」
「恨みの滝に行けば何か判るかも知れませんね。」
「そうだね。」
「恨みの滝はここからまだ遠いのですか。」
「そうですね、距離的にはそれほど遠くはありませんが、何しろこのジャングルですからね。順調に行って、4~5日は掛かるでしょうね。」
「後4~5日か。判断に迷うな。」

怪物ミノタウルス(4)へ続く


2006年09月27日

第4章 黄泉(よみ)返りの森 怪物ミノタウルス(4)

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キャプテンは暫く考え込んでいたが、どうやら考えがまとまったようだ。
「皆聞いてくれ。」
「なんだい、キャプテン。」
「いろいろ考えたんだが、第一次隊の探検はここまでにしたいと思うんだ。」
「たった5人だけで、これ以上続けるのは危険だと思うんだ。ここまでで既に、10日が経った。この先の『恨みの滝』までは、順調に行って4,5日掛かるということだから、浜に戻るには出発から30日以上掛かることになる。それだけの装備もしていないし、ここはひとまず皆のいるところへ戻って、作戦を練り直したいと思う。」
「残念だけど、しかたがないわね。」
「くやしいな。」
一行が車座になって、話し合っている背後で、何か地面を引きずるような音が近づいてきた。
しかし、皆は話に夢中で、気がつかなかった。

突然、巨大な植物の蔓が延びてきて、アドルフさんの左足首に絡みついた。
絡みついた蔓は、万力のような力でアドルフの足首を締め上げた。
見る見るうちに、左の足首から下は色が変わっていった。
明らかに、血液が通わなくなっている。
さらに、もう1本の蔓が延びてきて、右腕に絡みついた。
アドルフは、腰に差してあったサバイバルナイフで切ろうとしたが、自由を奪われ思うように動けない。
「アドルフさん、大丈夫か?」
「今助けるから。」
蔓はまるで、蛇が獲物を締め上げるように、強力に締め上げてくる。
後数分この状態が続けば、アドルフの骨は砕けてしまうに違いない。
もう一刻の余裕も無い。
キャプテンは渾身の力を込めて、なたを振り下ろすと、腕に絡みついた蔓が切れ落ちた。
すかさず、足に絡んだ蔓も切り落とした。
皆は、すぐさまその場を離れた。
蔓が襲ってくるような気配は感じられなかった。

アドルフの足と腕には、切断された蔓の一部が絡みついたまま残されていた。
取り外して見ると、体にはかなり食い込んだ痕がはっきりとわかった。
蔓の先端には、吸盤のようなものがついており、一度絡みついたら、枯れても離れないのではないかと思われた。
「やはり何が起こるか判らない。」
「一旦戻って、装備などを立て直して出直そう。」

「おやびん、あの植物はなんですか。びっくりしましたね。」
「あれは食虫植物の一種で、タコアシツタの仲間だろう。しかし、あんなに巨大化したのは見たことも聞いたことも無い。」
「これから先、あんなのに襲われたらたまったもんじゃないですね。」
「タコアシツタは高度なセンサーを備えている。」
「センサーですか。」
「そうだ、センサーだ。」
「動物の体温を感じ取ると、その方向に蔓が伸びるようになってなっている。そして、その発熱体に触れると、絡みつき締め上げる性質を持っているというわけさ。」
「なるほどね。」
「ところで、五遁マスターマントの威力は流石だな。」
「そうですね。船の中でも、我々の気配を消し去ってしまいましたからね。」
「あの蔓は、お前の足元をはいずっていったが、全くお前には反応しなかったものな。」
「そうですよ。私も一瞬ドキッとしましたけど、何事もなかったですからね。ところで、おやびん、私達はこれからどうしましょうかね。連中はどうやら引き返すようでげすよ。」
「そうだな、食料の忍者食は後どれぐらいもつのかな。」
「そうですね。ざっと20日はもちますね。」
「そうか。『恨みの滝』までは4,5日掛かるから、行って来れないこともないな。」
「おやびん。行きましょうよ。」
「じゃあ、そうするか。」
謎の2人組みはジャングルの深部へと消えていった。

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